第42回の審査を終えて
下村 泰彦 審査委員長
本年度の審査対象は、52件(建物49件、まちなみ3件)であり、例年通り審査資料にもとづいた1次審査で11件を選出し、現地審査による2次審査を行った。今回から、現地審査においては「景観賞」であることを鑑み、敷地周辺の公的空間から視認して審査することとし、敷地内部景観に関しては、一般利用者等が自由に敷地内部に入れる場所からの視認性に限定した。さらに、対象施設間での公平性確保のため、現地での設計者等の説明を割愛することとして実施した。
2次審査では、まず投票が集中した上位3点について、「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」に大阪市長賞を、「守口市立さくら小学校」に大阪府知事賞を、「石切回廊」に審査員特別賞を授与した。
「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」は、圧倒的な壁面緑化等が梅田のシンボリックな景観を形成している点を評価し、「守口市立さくら小学校」は、周辺戸建住宅群との統一感に配慮して分節化した2階建て勾配屋根校舎のデザインと周辺地域への緑の供給性とを評価した。また、「石切回廊」は、石切劔箭神社の参道商店街の起点という立地に配慮したデザインを評価した。
緑化賞ならびに建築サイン・アート賞については、議論の結果、市街地イメージを激変させた圧倒的な緑地空間の創出と立体サイン・建物壁面への夜間照明などを評価し、両賞を「OMO7大阪 by 星野リゾート」に授与することとした。
奨励賞を授与した「NTT WEST i-CAMPUS(A棟・QUINTBRIDGE)」は、大規模敷地内での密集した建築群の中に多様な緑地景観を創出しており、「大塚製薬 大阪創薬研究センター」は、緑豊かな自然環境に溶け込んでいた。「Ruelle sud/nord」は、住宅をセットバックさせて前面道路側への空地を生み出し、「上町メディカルテラス」は、隣接する都市公園との連続性に配慮しており、「なんばSkyO」は、隣接する商業施設との景観的な連続性が創出されていた。
今回、各賞を受賞した施設については、立地や建物用途は多岐に亘るものの、隣接建物やまちなみ、周辺環境・景観に配慮している点が共通しており、本賞が「まちなみ賞(俗称)」であることが再認識された。