第43回の審査を終えて
下村 泰彦 審査委員長
本年度の審査対象は、昨年度と同様52件であった。昨年度の建物49件が本年度47件、まちなみ3件が5件となっており、傾向に大きな変化はなかった。
例年通り審査資料にもとづいた1次審査で11件を選出し、現地審査による2次審査を行った。今年度も、現地審査においては、敷地周辺の公的空間から視認して審査することとし、現地での設計者等の説明を割愛することとして実施した。
2次審査では、投票が集中した上位作品について慎重に審議した結果、大阪府知事賞に「光亜興産株式会社 本社ビル」を、大阪市長賞に「三栄建設鉄構事業本部新事務所」、審査員特別賞に「しらさぎ子ども図書館-詩の森-」を選出した。
「光亜興産株式会社 本社ビル」は、隣接する都市公園と視覚的にも行動的にも一体感を創出し、テラスの緑化による緑が繋がる景観を呈していた。「三栄建設鉄構事業本部新事務所」は、工業系地域にあって建築物と工場の鉄骨フレームを強調し、オープンな外構が地域イメージを向上させ、「しらさぎ子ども図書館-詩の森-」は、ぬくもりのある景観を呈しながら住居系地域の交流拠点となっていた。
緑化賞の「医療複合施設 i-Mall」は、街区を超えた公開空地に十分な緑化を施し、連続的な景観を創出し、建築サイン・アート賞の「満寿美公園」は、都市公園でありながら地形勾配を活かした象徴的でアーティスティックなデザインとなっていた。
奨励賞を授与した「サンスターコミュニケーションパーク」は、工場跡地において周辺地域に十分に緑を供給するオフィスビルに変容させ、「T-LINKS」は、大屋根とテラス、緑化が工業系地域にシンボリックな景観を呈していた。また、「本町ガーデンシティテラス」は、御堂筋側の緑化テラスが街路景観との連続性を形成し、「高槻城公園芸術文化劇場」は、隣接する公園とともに歴史的雰囲気を醸し出していた。「富田林の家」は、平屋建てとして建物高さを抑え、セットバックされた部分の緑地が地域へのゆとりのある空間と緑量を供給していた。
今回、各賞を受賞した施設については、地域における今後の景観を先導するシンボリックな施設のみならず、周辺土地利用や立地特性に配慮し、周辺景観と調和した施設が多いことが特色であった。